エルサレム賞とデビス杯

2009.03.31.
時事的な話題としては、ちょっと(ずいぶん?)前のことになりますが・・・

合衆国のネブラスカで大学院生活をおくるアリスさんが、「村上春樹さんのイスラエル賞受賞でのスピーチ素敵でした」と、村上春樹「エルサレム賞」受賞スピーチの日本語全訳されたサイト(←リンクしてます)を紹介してくださいました。

エルサレム賞はイスラエル最高の文学賞で、現代日本を代表する作家村上春樹氏が2009年の受賞者となり、エルサレムでの授賞式は2月15日でした。 

パレスチナ自治区ガザへの攻撃で国際的非難が高まっているイスラエル。 スウェーデンではイスラエル産の野菜や果物の不買運動を呼びかけたりしてましたが、3月始めにスウェーデンで行なわれた男子テニス国別のデビスカップがボイコットされる騒ぎもあったっけ。 

それというのも、グループ一回戦がスウェーデン対イスラエルで、開催された町が紛争地帯からの移民が多い地域だったから。 最初、イスラエルに抗議する市民団体からボイコットの声が上がったようだが、それに賛同した左翼グループがデモを計画し、さらに騒ぎを起こしたくてたまらない血気盛んな輩が加わって、収拾できない状態になること必須。 (スウェーデンの都市部では、このようなパターンが多い。 行き着く先は暴動化。) それを危惧した政治家が、試合をボイコットすることを決定し、一般公開せず、観客不在で試合が行なわれたのでした。

それでも当日、デモは行なわれ、警察隊との衝突もあった模様。

この場合、大人数で相手を屈しようとしているのは誰か、正義の名もと暴力をかざしているのはどっちか、考えずにはいられませんでした。

村上春樹氏は、ご自身で賞を受けるか辞退するか決断し、一人でイスラエルに赴き、一個人としてご自分の意見を授賞式で述べられた。 イメージダウンや身の危険だってあったろうに。

スピーチの内容も素晴らしいですが、氏の言動そのものが勇気あるものだと敬服いたします。 と、デモばっかりやってる連中を横目に思ったのでした。

追記: 実は、私も村上春樹作品はそれほど読み込んでいないし、たとえベストセラーでも自分の感性に合うとはいえない小説もあるし・・・ でも、エッセイはオススメ~。 難解ではなく、読みやすくておもしろいですよ。 この『村上朝日堂』は安西水丸さんのイラストとも合っていて、村上さんってなかなかチャーミング、なんて思います。

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この文庫本を読んだのは、旅先のバックパッカーズ(宿)で。 そこで出会った日本人の旅人が、別の日本人から譲り受けたのを私が貰い、私も次の日本人宿泊者に預け・・・ かなり昔の思い出話です。 (出版年を見ればお分かりのとおり・笑)
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コメント
Gunvaldさんへ
スピーチの内容もさることながら、ご自分の中にある原理を貫かれたからこそなんですね、こんなにも村上春樹氏の言葉に動かされたのは。 個人個人で見れば、なんて素晴らしい人たちが、日本に多くいるのでしょう。 なのに、なんで日本の政治はいつまでたっても三流なんでしょうね・・・ (スウェーデンは、その反対かもしれません・・・!?)
原理(principle)そのものが存在しないからか。 それとも原理(principle)に関する認識が、日本と欧州では根本的に違うからか。 
らくだのせなかさんへ
立派な賞を受ける作家の作品って、読破できないものが多いのは、どういうわけでしょう・・・ 賞を授ける側は、皆さんきちんと読んでいらっしゃるんでしょうが・・・
スポーツは国別、国を代表しての試合が多いから政治の材料に使われやすいのでしょうが、気持ちよく試合をさせてあげたいし、なんとも気の毒ですよ。 今回は主催地である市がボイコットを決定したので、国際テニス連盟みたいなとこから、「あんたんとこの市では、これから5年間、国際試合を開催させてやんない」って言われたそう。 この場合、暴力に屈してボイコットしたのは市になりますよね。 
最近ヨーロッパでは若者達の暴動が勃発していますね。 平和主義という言葉が見当たらない・・・
principle
受賞式に出席しないという形の意思表明よりも数段インパクトのあるやり方でしたね。
勿論、授賞式の席上で起こりうるどんな反応にも直面せざるを得ないのでご当人にとっても覚悟が要ったことと想像できます。
自分の中にある原理(principle)に反することをしないという矜持を持つことは容易なことではない場合もあるでしょうが、それを貫いてこそ他人に感動や共感を与えることができるのだと思います。

昨年の春、ガソリンに掛けられた”暫定税率”というものが失効するという時期に時の首相は「サミットを前にして(世界各国に対し誤ったメッセージとなるような)ガソリンの消費を助長するような政策はできない。」という旨を述べていました。
そして1年も経ない現在、高速道路の料金の値下げという事態です。現在の首相と1年前の首相は別の人物ですから各々がどうだかは知りませんが、少なくとも日本政府というシステムには”principle”というものがあるようには感じられません。
なるほど・・・と。
実は、村上春樹さんの本は、読み終わる前に途中でやめちゃったことがあり、まともに読んだことがないのです。
今回のスピーチ、当たり前のことをごく簡単に言っておいでですが、決断に至るまでの苦悩は、かなり大きかったのではないかと思います。でも、メディアの報道などから伝わってくる村上春樹氏の姿を貫いた行動かなというイメージを受けました。

スポーツが政治の材料として使われるというのは、残念ながらよくありますね。某国では、30年以上も前に、やはりイスラエルの選手に対しての恐ろしいテロ事件がありましたし、冷戦時代はオリンピックのボイコット合戦などなど。
部外者の私から見れば、折角、イスラエルからやってきて、観客のいないコートでテニスをするというのは、何とも気の毒な気がします。

スウェーデンでも左翼団体による暴力行為があるのですね。某国でも、増加傾向にあるとの報道が出たばかりですよ。どこにでも、騒ぎを起こして暴れたい輩はいますねぇ。
LINDA☆さんへ
私は、テニスに詳しくないので、デビス杯って何?なんでそんな大騒ぎするの?なんて、最初思っていました。 
今イスラエルがしていることを思えば、紛争地域から移住してきた人たちの抗議の気持ちは分かります。 LINDAちゃんのおっしゃるとおり根が深く、また当事者でない者達にとっては、決して理解できない問題でもあると思います。 それゆえ、軽々しく扱えない面もあるでしょう。

デモ自体は、まったく悪いことではありませんよ! こっちでも、やはりデモには許可が必要だし、警察の付き添いがあります。 でも、デモに便乗し練り歩き、建物を破壊したり、別のグループと喧嘩したり、警察隊を挑発して騒ぎを起こそうとする人たちがいるから・・・ 

国を代表してとはいえ、テニスの国際試合に来ている数人の選手達を前に、そんな大勢で何をしたいんだろ、と思わずにはいられなかったので、村上春樹氏のスピーチが、とても新鮮で「かっこよく」見えました。

あ、このリンク先は私信でいただいたので、アリスさんのブログでは(まだ?)触れていないんですよ! 今、アリスさんとこ行っても、映画の話とドラえもん似のアメリカ人からお茶に誘われた話とか・・・ でも、下の方(過去の記事)にいくと良いお話がありますよ。 
tulpさんへ
この国では、表現の手段としてデモは当たり前のことですが、メッセージもなく、いとも簡単に暴徒化する傾向にあるのが怖いです。 イスラエルに反対して試合がボイコットされたわけではなく、暴動を恐れてボイコットした事実を思うと、悲しいですね。

きっかけがあっても、なかなか手を出すことが出来ずにいる場合もあるので、すんなり読むことができるtulpさんの姿勢を、私は見習いたい!
めたるさんへ
そんなめたるちゃんの為に、お薦めの村上春樹本を追記で紹介しました! エッセイはおもしろいですよ、シモネタはないけど。 
ノーベル賞作家だからって、作品が良いとはかぎりませんよね。 ヘッセは別として。
アリスさんへ
いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました!
デモ自体は、自分達の声を多くの人に伝える手段だと思います。 一人では出来ないことを、多くの人と力を合わせ、巨大な勢力に立ち向かう手段ですよね。 しかし、メッセージもなく「やっちまえ、おー」みたいなノリで騒ぎ起こしているのを見ると・・・
それゆえ、村上さんの個人的なスピーチに心打たれました。
かおにゃんたさんへ
そう言っていただけると、とても嬉しいです。
私も教えていただき、このリンク先で全文を読むことができたのですが、「ペンは剣よりも強し」と思いました。 さすが賞を受賞する作家の言葉です。

誰が、どっちが、良い悪いの問題ではないんですよね。 でも、ここ数年、言葉を疎かにし、すぐ暴力にうったえる若者が多いようで・・・ (昨年はコパンハーゲンでも、かなり激しい暴動が起きていたし。) それが、とっても気になります。
こんばんは

村上春樹氏のスピーチは
受賞当時に新聞の社説で読みました。
全文じゃないですが。

軽い言い方ですが かっこいいなと思いました。
作家らしい手段での、堂々とした抗議。表現。
後でじっくり紹介してくださったアリスさんの記事拝見したいと思います。
デビス杯のことは恥ずかしながら知りませんでした。
深く考えさせられる出来事ですね。
パレスチナ問題は根が深いので
なかなか言葉が出ません。
ただ弱い立場の犠牲者が無くなることを願うばかり。
もう少し私、偏りのないお勉強が必要です。


ワタシは
過去にデモに参加したことがあるので
そういう意味でも今回のChakyさんの記事は
ハッとしました。
と言っても、全く別件のデモ。
しかも日本の地方都市の話なので
警察への届け出して、許可をもらった
ごく平和的なものでしたけどね。
その心痛む件について、一市民の私に何ができるか考えたとき
出来ることが、他になかったのです。

世の中そうはいかないことが多いけど
スポーツと政治、戦争は切り離して考えたいですね。

長文失礼しました。

今までまったく村上春樹さんの本には興味なかったのですが、
最近ちょっとしたきっかけがあり、ちょうど何冊かよんだところでした。

スピーチ内容もそうですが、反対され、身の危険やイメージダウンの恐れもあるのに、あえて賞を受け、自分の意見を述べる場を持った。その姿勢がほんと素晴らしいですね。


おかしいと思うことに対する批判、抵抗
それを表現し、他者にも訴えかけていこうとするのはいいのですが
その動きが極端で、排他的、暴力的になると・・・怖いですよね。
実はあまり・・・
 私は村上さんの作品は「海辺のカフカ」しか読んだことないのですが、
正直言って、どこがいいのかわかりませんでした。彼がノーベル賞候補と騒がれていても「井上靖さんでさえ取れなかったのに・・」との思い。

 しかし、彼にはそんな一面があったのですね。一冊だけで判断を下さず、もう少し村上作品を読んでみようかなと思います。
素晴らしい。記事にしていただいて、ありがとうございます。
デモ自体は問題意識を喚起する意味で良いと思うのですが、暴徒化したり、暴力を行使するのはいけないと思います。
暴力に暴力で応酬しても傷つく人が増えるばかりですよね。

村上さん(友達か?!)のスピーチには感動しました。
社会の底辺や反対側にいる人たちの味方になると言うことではなく、彼らの視線に立ってみることが大切なのだと考えさせられました。
Chakyさん、リンクありがとうございます。
久しぶりに率直で素晴らしいメッセージのスピーチとめぐり合いました。

そういえば、テニスのデモすごかったですね。
デンでもテレビのオンラインニュースにでてました。
イスラエル問題も、世界のあちこちでおきてる問題や戦争も、あまりにも長い歴史があって「今」があるのでどちらが正しいとはいえず、難しいことです。
なんかこう、ガンジーみたいな武力や兵器を使わない、平和主義のリーダーがでてこないかなぁ・・・

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